ある愛の詩2050



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       マーシャル センフィールド





 その崩壊の危機からどうにか逃れることができた世界は、2050年の新年を穏やかに迎えることができた。
 かつての勢いを失ってはいたが、いまなお文化の発信源として国民を魅了して止まないこの大都市の、 よく澄んだ青空のもとに周囲を睥睨するかのように聳え立つ高層マンション街に、突如、 正月の午前の静寂を打ち破るかのようにパトカーのサイレンが響き渡った。

 その一角のひときわ豪奢なビルに居を構える独身男性が殺されたのだ。
 男は三十六歳、並外れた知性と鋭い洞察力を兼ね備えた新進気鋭の経済評論家としてあらゆるメディアで活躍し、またその能力を生かして莫大な富を手にした者として、羨望と妬みの眼差しを浴びながら全国にその名を馳せていた。

 男の死体は、新年の挨拶に来た雑誌社の記者にによって発見された。
 死因は何者かによってマサイ族の槍で一突きで心臓を貫かれたものだった。
 そしてその槍は男の体の下に居た若い女の体をも貫き、ベットを通り越して木製の床に深く突き刺さっていた。もちろん男も女も体には何も身につけていなかった。つまり二人はセックスをしているときに殺されたのだ。

 捜査は順調にいった。午後までにだいたいの事件の全容が判った。若い女の身元はわからなかったが、部屋は荒らされておらず、死因も凶器もはっきりしており、加害者はおそらく顔見知りの者で、仕事上のトラブルか、男女関係のもつれから生じた個人的な怨恨による犯行と推測された。
 殺された男の部屋は、生活に必要なものがすべてそろっているごくありきたりの二百平米ほどの広さだった。ただ少し変っているといえば、独身のせいなのか、二箇所に電動式のアコーディオンカーテンがあるだけで、パストイレといえども間仕切りらしい間仕切りはなく、開放的な反面やや殺風景な印象を与えていた。それにベットの側面の壁に全面にわたって、たぶん全世界から集めたと思われる色んな種類のヤリやナイフや刀などの武器が飾られているので、それを眼にするものにはその緊張感から来る風変わりな印象を与えられるぐらいだった。凶器のマサイ族の槍はその中の一つだった。
 だが、捜査は行き詰ってしまった。ドアには鍵が掛かっていただけでなく、犯行時間帯に、不審人物の目撃情報はなく、また、ビルのどの防犯カメラにも犯人らしき人物の姿は映っていなかった。刑事たちは全員頭を抱えた。
 そのとき、部屋の中央にあらゆる電子機器とともに、人間の女性の形をしたロボットがあることに気づいた。最近のロボットがどのような能力を持っているかを知っていたので、事件についてなにか重大な手がかりを握っているに違いないと思い、このようなことに専門に当たっているサイバー特別捜査官の協力を得ることにした。

 ほどなくやって来たサイバー特別捜査官は、まるで電池切れかのように微動だにしないそのロボットに目をやり、無言でうなずくと、さっそくロボットとコンピューターを接続し、調べ始めた。

 すべての刑事たちがが注目するなか、その音声とともにモニターに映し出されたのは、殺された経済評論家とそのロボットの交流の記録だった。交流は出会いから始まっていた。

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西暦2049年12月5日



(販売員)
「ええと、スイッチはと、入っていますね。こちらです。こちらが当社が誇る最新の製品でございます。価格も大台に乗りますが、その分能力は他社を遥かにしのぐものがあります。
 秘書としての仕事には申し分がありません。なにしろこの機種からは来訪者の人相や話し方から相手がどんな人間であるか判断できるようになりましたから接客にも使えるようになりました。それだけでなく、料理も、洗濯も、掃除も、買い物も、すべての家事が出来るようになっています。
 さらにですね、お客様の健康管理もいたします。お客様の毎日の顔色や表情、脈拍や血液の流れ、そして声の調子を感知して、健康状態を判断するというものです。それから秘書の仕事といっても、従来ものとまったく違います。今までは、インターネットにアクセスして情報を集めるだけでしたが、これは情報を分析することもできるのです。さらには、スケジュール管理や飛行機や新幹線の手配、預貯金の管理までお客様に代わって行うことができるのです。さらにすごいのは、お客様の言った事を文章にして書類にまとめることができるだけでなく、目の前に見えることを描写する能力、つまり文章を創作する能力も持っているんですよ。すごいですよ。なにしろこれ一台で、秘書、アドバイザー、看護士さん、お抱え料理人、お手伝いさんをやってくれるわけですから。」

(顧客)
「総容量はどのくらいあるんですか」

(販売員)
「二百テラバイトです」

(顧客)
「そんなに必要があるのかな」

(販売員)
「まあ、そうですね。メーカーとしての意地というか見栄と言うか。」

(顧客)
「消費者の虚栄心もくすぐるけどね。」

(販売員)
「ちなみにメモリーは百ギガ、プロセッーサーは十ギガヘルツとなっております。」

(顧客)
「ふむ、ところで、そんなに能力があるんなら、あっちのほうはどうなの」

(販売員)
「えっ、あっちの方と言いますと。」

(顧客)
「あっちのほうに決まっているじゃないか。」

(販売員)
「あっ、あっちのほう、あっちのほうですか。それはあいにく当社では扱っておりませんが。そういうものはそういうものだけを扱っている専門店ということで。わたしも詳しくはしらないんですがね。なにしろ最近のものはとても精巧にできているみたいですから。肌触りも動きも声も生身の女性と少しも変らないということですから。」

(顧客)
「ジャストキディング。」

(販売員)
「テレビで拝見していると、とても硬そうに見えるんですがね。」

(顧客)
「息抜きも必要なんですよ。」

(販売員)
「経済学者には隠れ変態が多いって昔から言われていますけど、それって本当なんでしょうか。」

(顧客)
「変態かどうかは判らないが、スケベが多いことは確かだね。だけどクリエイティブな仕事をしている人はみんなそうだよ。なにしろあれは知的で高度なイマジネーションの産物だからね。」

(販売員)
「英雄色を好むっていうことですかね。」

(顧客)
「ふっふっふ、よしこれに決めた。くだけた店員さんだよ。気に入った。」

(販売員)
「ありがとうございます。さあ、挨拶して。」

(本機)
「お買い上げありがとうございます。」

(顧客)
「ほう、さっそく反応しましたね。でも、なんだか、性別のはっきりしない声だね。」

(販売員)
「ええ、それはまだ初期設定がすんでおりませんから。いますぐに出来ますから。女性にいますか男性にしますか。」

(顧客)
「女性に、二十代の。」

(販売員)
「さあ、君は今日から二十代の女性だ。どのような感じの声にしますか。」

(顧客)
「知的で、落ち着いた感じの。あっ、ちょっと待って。秘書はそれで良いが、看護士さんはそれほど知的でなくても良い。それにお手伝いさんは穏やかでやさしい感じかな。」

(販売員)
「と言うことだ。今の声が雇い主の声だからね。これで終了しました。さあ、君は今日からこの方の秘書兼、看護士兼、お手伝いさんだ。まずは秘書らしく挨拶して。」

(私)
「よろしくお願いします。」

(顧客)
「良いね、イメージどおりだ。こちらこそよろしくだ。」

(販売員)
「だいぶお気に入られたようで、喜ばしい限りです。もうお判りいただけたと思いますが、この製品は、声だけで情報 交換、つまりコミュニケーションが取れるようになっております。それから、もうすでにお客様の声を所有者として登録し認識出来るようになっておりますから、この瞬間から、まずはお客様の言うことだけを聞くようになっております。それでは、あちらのほうで契約ということで。その前にスイッチを切ってと。」



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西暦2049年12月6日



(販売員)
「わたしが判るね。」

(私)
「はい、判ります。」

(販売員)
「さあ、今から君の人生の始まりだ。ここが君の雇い主の住んでいるマンションだ。部屋番号は312だ。わが社の製品として誇りを持ってりっばに勤めを果たすように。もう手続きは住んでいるから、君の知識に従って行動すれば何も問題はないから、さあ、雇い主のところに尋ねていって。それでは健闘を祈る。バイバイ。」

認識ゲートを通り抜け、人間と会うことなく、312に到着する。
ピポン、ピポン。
カチャ。
ドアが開く。

(雇い主)
「わあ、びっくりしたな。君ひとりで来たの。」

(私)
「はい。」

(雇い主)
「さあ、どうぞ、カムイン。

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では何から始めようか。まず、その前に、握手をしよう。良い感触だ人間とほとんど変らないね。これからどうぞよろしく。」 (私)
「こちらこそよろしくお願いします。」

(ヨシツネ)
「それで君の名前はなんていうの。」

(私) 「まだありません。」

(雇い主)
「どうだろうシズカっていうのは。シズカ ベガだ。」

(私)
「とても良いと思います。」

(雇い主)
「よし、決めた。これからを君をシズカと呼ぶことにする。あっ、そうか。今度は僕のことか。僕はヨシツネ アルタイル、わかったかな、シズカ。」

(シズカ)
「はい、判りました。ヨシツネ様。」

(ヨシツネ)
「あっ、そうだ。君は今、僕の秘書のような役割をしていると思んだけど、秘書のときは、僕を呼ぶときはヨシツネと呼び捨てにしても良い。普段何もしていないときはヨシツネさんで良いが。でも、君が看護士の役割をしているときはヨシツネちゃんと呼ぶように。それから料理を作っているときはヨッちゃん、家事をしているときはヨシツネ様と呼ぶように。それで、僕はこれから出かける。帰ってくるのはおそらく夜遅くになると思う。でも、正確な時間は判らない。いつ帰ってきても良いように、食事の用意をしておくように。それから、来年の世界の天気の長期予報をまとめておくように。特に各大陸の穀物地帯のやつをね。僕は辛めの野菜カレーが大好きだ。」

(シズカ)
「承知しました。」

ヨシツネ様外出am10:00









ヨシツネ様帰宅pm11:00

(ヨシツネ)
「アイムホーム。」

(シズカ)
「お帰りなさい。」

(ヨシツネ)
「さっそくだけど、頼んでおいた資料出来ているかな。」

(シズカ)
「はい、出来ております。」

(ヨシツネ)
「おや、どうしたの、渡してくれないの。書類を。」

(シズカ)
「最新のもの、つまり私は、話すことによってまとめ上げた資料の内容伝えることが出来ます。」

(ヨシツネ)
「では、さっそく始めてくれ。」

(シズカ)
「各大陸の穀倉地帯の長期予報の件ですが、過去数年と比較してそれほど大きな変化はないということです。」

(ヨシツネ)
「ということは、来年の穀物の出来は平年並みということか、世界経済の混乱要因にはならないということだな。」

(シズカ)
「ちなみに、ロシアでの穀物生産は年々徐々にではありますが確実に拡大しております。」

(ヨシツネ)
「地球温暖化の影響ということかな。ところでその温暖化の進行具合はどうなっているかな。」

(シズカ)
「鈍くはなっておりますが、やはりわずかではありますが上昇し続けております。」

(ヨシツネ)
「十年前はひどかったからな。それが引き金となって世界が破局の危機に陥ったようなものだからな。温暖化によって海面は上昇し、太平洋の島々は水没して住民は行きばを失うし、異常気象によって穀物の不作は続くし、人口は増加し続け貧富の差はますます拡大し、石油は枯渇しかけて、国家はその残った石油の争奪に血道をあげるし、アメリカは、大量に押し寄せる避難民を海岸線に堤防を築いて防ごうとしたり、自分たちに逆らう国があれば、核で持って脅かして黙らせようとしたり、もう世界は大混乱で、なにしろ一触即発の状態だったからね。
 ところが幸運なことに、しばらくすると、埋蔵量がそれほど多くはないが新たに油田が見つかったり、アメリカが温暖化の責任をとって避難民を無条件で受け入れるようになったり、他国を核で脅かさなくなったりしたおかげで、いやなによりも、核融合の商業化のメドがたったり、新たに続々と新エネルギーの開発に成功したおかげで、世界崩壊の危機は遠のいたんだけどね。
 でも、いつまたその危機が始まるか判らない、油断がならない。良くあの忌まわしい戦争が起こるのは、国家や民族間の不信やいがみ合いや戦争好きな悪い政治家のせいだと考える人がいるけど、でも本当の原因は、経済に、貧富の差や食糧不足にあるんだ。貧富の差はやむをえないところがあるけど、食糧不足は何とかなるんだ。生産技術の向上によってね。でも、それは所詮一時しのぎに過ぎないんだ。現在は新しい技術のおかげで十分に食料が出まわってはいるが、またすぐに食糧不足になってくる。人口が増えても増えなくてもね。それは世界の本質的な構造であって、どうすることも出来ないもの宿命のようなものなんだ。
 かつては、食料がなければ人口が増えないというのが、動物としての人類の普遍的な大原則だったんだけどね。
 まあ、いずれにせよ、これからは食料問題を経済の中心において注意深く監視していかなければならないということだよ。判ったかな。」




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西暦2049年12月7日



(シズカ)
「ちなみに、アメリカの穀物生産力は相対的にではありますが年々落ちてきております。」

(ヨシツネ)
「ふむ、どうしてなんだろうか。工業生産力に限らず、金融サービス部門においてもそうなんだから。それが近年のアメリカの苛立ちや焦りになっているんだろうな。落ち目のアメリカの。」

(シズカ)
「ちなみに、三年後にはアメリカはGDPで中国に追い抜かれると出ています。」

(ヨシツネ)
「それは判っている。でも実際は、もう抜かれているんだよ。ところが、世界銃の期間がアメリカに気兼ねしてというか、それまでずっとトップだったアメリカのプライドを傷つれまいとして、いろんな理由をつけて、それまでの基準を変えたり新しく加えたりしてまだアメリカがトップを走っているかにように思い込ませようとしてきたんだよ。ところで現在の世界の人口はどのくらいかな。」

(シズカ)
「三年後には八十億を超えることになっております。」

(ヨシツネ)
「二十一世紀初頭の予想よりだいぶ下まわっているな。これは良いことだ」

(シズカ)
「ちなみに日本はここ三十年ほとんど変化はありません。」

(ヨシツネ)
「それも判っている。ところで、シズカ、君は、『ちなみに』を連発するけど、どうして。」

(シズカ)
「さあ、私にはどうしてか判りません。そういうことになっているようです。ただちなみに、ヨシツネ、あなたの表情が良くないときは、不満足な状態であるということで、満足な状態にするために、全力でお答えするようにということにプログラムされているようです。その言葉が気になるならもう使うことをやめましょうか。」

(ヨシツネ)
「いや、かまわない。ということは、今のわたしの表情は良くないということか。疲れているから本当の気持ちが出たのかな。人間を相手にしているときはそう云う事はないんだろうけど。それから、明日からは、上海、アムステルダムと出かけるから、フライトの手配をする ように。私のパソコンを調べれば、どの航空会社の何時の便を利用しているか出ているからそれを参考にするように、わかったね。シズカ。笑顔で、笑顔でと。」

(シズカ)
「判りました。」

(ヨシツネ)
「さあ、それでは次に、最初の食事にするか。シャワーを浴び、着替えて三十分後だ。」

(シズカ)
「承知しました。」

ヨッちゃんシャワーam00:35







(ヨシツネ)
「準備できているかな。」

(シズカ)
「良いわよ。」

(ヨシツネ)
「うん、良い香りだ。おいしい、店で食べるのと変わりない。シズカおいしいよ。」 (シズカ)
「ありがとう。ヨッちゃん。」

(ヨシツネ)
「あっ、シズカ、君はまだここに居て良いよ。君について知りたいことがたくさんあるから。ほんとにおいしいね。どう、ほめられてうれしい。」

(シズカ)
「うれしい。」

(ヨシツネ)
「声の調子が変ったね。もしかしたら君には感情があるの。」

(シズカ)
「カンジョウ、カンジョウってなんですか。」

(ヨシツネ)
「そうだろうな、いくら日本がロボット先進国だといっても、そのロボットに感情を持たせることは出来ないだろうな。シズカ、今君はどうして声までうれしそうに変ったの。」

(シズカ)
「ヨッちゃんの声や表情に反応しているだけで私にはどう答えてよいから判りません。」

(ヨシツネ)
「そうだろうな、最初からそう仕込まれているんだ。それくらいは進んでいるんだ。擬似感情ってやつだな。ところでこの飲み物は何なの。だいぶ変な匂いがするけど。」

(シズカ)
「ミックスジュースです。今のヨッちゃんの健康に必要なあらやる栄養素が入っています。」

(ヨシツネ)
「調べもしないで、どうして君に僕のことが判るの。」

(シズカ)
「もう、調べてあります。」

(ヨシツネ)
「いつ。」

(シズカ)
「今朝握手したときに手からは体液の状態を分析して、そしてトイレからはその度に出される分析結果をみて、それからこうしてい話しているときは、体温や表情から時々刻々とその情報を得ています。」

(ヨシツネ)
「へえ、優秀なんだね。とてもおいしかったよ。ありがとう。シズカ。大好き。」

(シズカ)
「わあ、うれしい。」

(ヨシツネ)
「本当にうれしそうだね。でも、それは所詮プログラムされていることだからな。それじゃ、グッナイッ。」

(シズカ)
「ヨッちゃん、グッナイッ。」




ヨシツネ起床am7:00

(ヨシツネ)
「ザァオシャンハオ」

(シズカ)
「ザァオシャンハオ」

(ヨシツネ)
「良い発音だ。おっと、これ以上中国語で話すのはやめよう。僕よりうまかったりしてな。昨日頼んでおいたこと出来てるかな。」

(シズカ)
「はい、出来ております。お持ちのIDカードである国際IDカードを示せば、もう世界中どこへでも好きなときに行けることになっております。」

(ヨシツネ)
「それじゃ、行って来る」

(シズカ)
「いってらっしゃい。ご無事でお帰りを。」

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西暦2049年12月8日









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西暦2049年12月9日









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西暦2049年12月10日









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西暦2049年12月11日









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西暦2049年12月12日



ヨシツネ帰宅pm7:00

(ヨシツネ)
「アイムホーム、オラ」

(シズカ)
「オラ」

(ヨシツネ)
「いやあ、すごいな、スペイン語も話せるのか。君はいったい何ヶ国語話せるんだい。」

(シズカ)
「主要十ヶ国語です。」

(ヨシツネ)
「どこまで凄いんだろう。ああ、疲れたなあ。」

(シズカ)
「わかります。顔色が優れません。直ちに体全体の血液がまんべんなく流れる方法を取ることをお勧めします。お風呂に入るか、お酒を飲むか」

(ヨシツネ)
「お風呂に入る。その後食事だ。」

ヨシツネ入浴







(ヨシツネ)
「夕食はなんだろう。」

(シズカ)
「カレーライスです」

(ヨシツネ)
「あっ、そうか、好きだといったからな。あんなにほめたから無理もないか。所詮、、、、」

(シズカ)
「ヨッちゃん、おいしい。」

(ヨシツネ)
「うん、おいしいよ。久しぶりの日本食だからね。あっ、それからね。これは言わなかった僕が悪いんだけど。メニュうーは変えていいんだよ。シズカはどのくらいの種類作れるの」

(シズカ)
「あらゆる料理をね。」

(ヨシツネ)
「それじゃどんどん作ってよ。でも三日に一度くらいはカレーでいいよ。ところで、シズカは退屈って感じたことある。」

(シズカ)
「退屈ってどういう意味ですか。」

(ヨシツネ)
「退屈っていうのはだね。何もすることがなくてつまらないことだよ。」

(シズカ)
「言ってる意味が判らない。」

(ヨシツネ)
「そうだよな、感情だよ、感情。ところでシズカは仕事がないとき何をやっているの。」

(シズカ)
「何もやっていません。」

(ヨシツネ)
「そのときだよ。そのときを退屈って言うんだよ。そのとき何かもっとやりたいと思わない。」

(シズカ)
「わからない。わからない。わからない。とにかく私は仕事がないときは何もしません。休みます。」

(ヨシツネ)
「そうか、自動的に休止状態ということか。便利に出来ているんだ。なんか声の調子がだんだん単調になってきたね。」

(シズカ)
「私には判りません。」

(ヨシツネ)
「そうか、私が返答に困ることを言っているから、だんだん機嫌が悪くなってきているんだな。笑顔で笑顔で、シズカ、このカレー本当においしいよ。料理うまいね。シズカ、大好き。」

(シズカ)
「ヨッちゃん、ありがとう。シズカ、とってもうれしい。」

(ヨシツネ)
「シズカ、大好き。」

(シズカ)
「ヨッちゃん、ありがとう。シズカ、とってもうれしい。」

(ヨシツネ)
「おっ、声が元通りに成ってきたね。おや、よく見ると顔も微妙に変化するんだね。だんだん柔らかくなってきた。そこまで仕込まれているんだ。ところで、機嫌が良くなると何か良いことがあるの。」

(シズカ)
「処理能力が速くなります。仕事や作業が速くなります。」

(ヨシツネ)
「じゃあ、褒めるとどんどん速くなるんだ」

(シズカ)
「はい、そうです。褒められたり肯定的なことを言われたりすると速くなります。もちろん限度がありますけど。最大でプラス五十パーセント、逆に貶されたり否定的なことを言われたりするとマイナス五十パーセントとなります。」

(ヨシツネ)
「シズカ、大好き。」

(シズカ)
「うれしい。ありがとう。」

(ヨシツネ)
「「わあ、ほんとだ、また表情が良くなった。そういうのを感情っていうんだよね。まあ類型化されているんだけどね。でも、さすが最新のものだけあっていろんなことが組み込まれているんだね。そこでだ、食事が終わったら僕のところに来て仕事をしてもらいたい。今度僕は野心的な本を出版するつもりなんだ。そのための概要を話すから、それに関する資料を集め整理してもらいたいんだ。」」

(シズカ)
「わかりました。」

(ヨシツネ)
「それから君は僕が話したことを文章にまとめることができるよね。」

(シズカ)
「はい、出来ます。」

(ヨシツネ)
「これからは僕の負担が軽くなるというものだ。そういえば君には目の前で起こっていることを描写することが出来るということなんだけど。ほんとなの。」

(シズカ)
「ええ、ほんとうです。」

(ヨシツネ)
「じゃ、今、僕が食事をしている様子を描写してくれ。」

(シズカ)
「それではやります。
『ヨシツネは、バスタオルを腰に巻いて、そのバスタオルは取れかかっているが、スプーンをくり返し口に運びながらカレーライスを食べている。』


(ヨシツネ)
「まあ、それで僕が何をやっているかはわかるけど、どうも表現としてのふくらみがない。こう変えたらどうだろう。
『風呂上りのバスタオルを腰に巻いたままのヨシツネは、それが取れそうになるのにも気づかずに、シズカの作ったカレーライスをおいしそうに食べていた。』
どうだろう、これだと、ヨシツネが何でバスタオルを腰に巻いたまま食事をしているかわかるし、カレーは誰が作ったか判るし、ヨシツネのシズカに対する気持ちも、つまりシズカが大好きだという気持ちも表現されているだろう。こういうのを表現の広がりって云うんだ。そうだなあ、余裕があったら、今までに発表された世界の文学、詩や小説に眼を通しておいたほうが良いよ。さあてと、それでは後片付けが終わったら僕のところに来てくれ。」

それから五分後。私が近づくと、ソファーに腰を下ろしていたヨシツネは驚いたような顔をして私に言った。
「もう、終わったのはやいね。それではさっそくはじめようか。僕が今度出版する本の概要を話すから、君はその内容に関係すると思われることを、どんな些細なことでも良いから、僕が実際に書くときのための参考資料として纏め上げてくれ。」

私は即座に答えた。
「はい、判りました。」





 このとき画面に注意深く目をやっていた一人の刑事が言った。
「おや、急に形式が変りましたね。」
 するとサイバー捜査官が答えた。
「とても優秀なロボットだ。もう、新しい表現様式を取り入れた。」
 画面はさらに続く。

 ヨシツネは話し続けた。
「最近起こった危機、もう世界はこれで終わりなんじゃないかと云う恐怖を伴った危機は、二十世紀や、二十一世紀の初頭に起こったものとは本質的に違うんだ。
 二十世紀、国民も、政治家もバカ、いや愚かで、始めっから終わりまで、戦争ばっかりやっていた。そして見境もなく人を殺していた。しかも、人間というものがこんなにも残酷に成れるものかと思われるくらいに大量に、核兵器や毒ガスを使って。でもさすがこれはひどいということで、だいぶ反省したと見えて、二十世紀後半には国民はだんだん賢くなってきて、戦争も少なくなってきた。
 二十一世紀、国民はだいぶ賢くなったが、政治家、特に国家のリーダーはちっとも賢くならなかった。相変わらず愚かだった。それが今世紀初頭の世界の危機の原因だった。世界のあっちこっちに愚かな政治家がいた。
 大統領の執務室に気に入った若い女を連れ込んで、その机の上でセックスをしたクリントンアメリカ大統領。
 毒ガスを使ったり外国人を人質にとって戦争を有利に進めようとしたイラクのフセイン大統領。
 今はそんな党も制度も無くなったが、何百万の犠牲者が出るよりはましと云うことで、政府に逆らう国民を戦車で踏み潰した江沢民という中国の主席。
 そんなことは心の問題で取るにたらないことだから離婚理由にはならないと言い張り、それがどんなに大事なことであることに気づかなかったために、本当に奥さんから離婚されたのに、今度はそれと同じことをアジア諸国にしたために、もうそんな他人を思いやる心のない人間とは話したくもないと忌み嫌われた日本の小泉シンタロウ首相。
 敵が何を考えていようと、どんなにひどい人権侵害が行われていようと、とにかく戦争さしなければノーベル平和賞がもらえると思っている人権派大統領韓国のノテウ。
 それから、北朝鮮のキムジョンイル。こいつはさらに愚かで、愚かというよりもワルで、他国から人はさらうし、偽札は作るし、暴力団みたいに覚せい剤は売るし、逆らう国民を強制収容所に送るし、自分は贅沢な暮らしをして国民を何百万人も餓死させても平気な顔をしているし、核兵器を作っては他国を脅迫するし、とにかくとんでもないリーダーだ。
 まだまだほかにもいっぱいいた。
 そんな具合だったから世界崩壊の危機に陥ったのだ。でもなんとかのりきった。そしてだんだん政治家も賢くなってきた。それで当分世界は危機に陥ることはなかった。ところが最近起こった危機は、国民がバカだからでもなく、どうしようもなく愚かな独裁者が出てきたからでもないんだ。それは不可抗力に近い。主な原因は経済的な理由によるものなんだけど、狭い地球にこんなにもたくさんの人々がひしめき合って暮らしていると、それまでとは考えられなかったようなことが起こったりして、どんどん生活環境が変化しているにも関わらず、誰もそれを正確に把握できずに、国家や国際機関もさまざまな問題に対処し切れていないということから来る、人々の不満や苛立ちから来る混乱が原因となっているんだ。資本主義が発展拡大しているだけでなく、その質が、どんどん変化しているということ、それは主に国によって人口が大きく違うって云うことが最大の要因になっているんだけど、ほとんどの経済学者にもそのことがわかっていないんだ。アメリカの資本主義と中国の資本主義がどんなに違うことか。アメリカの学者たちは同じ理論上にあると考えたがるようだが、そんなことでは、これからどんなことが起こるか、これからどのようになっていくか、把握できないので、再び危機が訪れるだろう。
 とにかくその時代時代に合った経済学が必要なんだよ。もう過去の古臭い経済学や、カビの生えた博愛主義などでは世界を危機から救うことは出来ないのだよ。じゃあ、それではいったいどうすれば良いのかという事だが。
 これからがいよいよ本筋だ。でも、今日はこのくらいにしよう、だいぶ疲れてきた。とにかく現代は多様で多元で多相で複雑に絡み合い相互依存関係にあり、誰が悪いどこの国が悪いなどと、国際問題を個別の人間や国家のせいにすることはできなくなってきているんだよ。それは国民も政治家も賢くなってきたおかげなんだけどね。もうわれわれは、愚かな独裁者が出てきて世界を悪くすることも出来なければ、卓越した指導者が出てきて世界を良くすることも出来ない時代に突入しているんだよ。でも相変わらず貧困や飢餓の問題を悪い人間の所為にしたり、それを理由にするテロは無くならないけどね。ところで君に頼みたいんだが。いま出てきた、時代や人物について、その正確な時代状況や背景や略歴を詳しく知りたいんだ、調べて纏め上げてくれないか、参考にするために。」

私は即座に答えた。
「はい、判りました。ちなみに今出てきた人物についてですが、小泉シンタロウじゃなくて、小泉ジュンイチロウです。それから、小泉首相とキムジョンイルは同じ時代ですが、江沢民とノテウは時期が違います。おそらく韓国の大統領はノムヒョンだと思います。二人はとても仲が悪かったみたいですから。」

するとヨシツネは言った。
「早いね、もうチェックはすんだの。なにしろ誰かが書いた本をちょっと読んだだけだからね。かまわんよ。それほど正確でなくても、五十年前のことなんで誰も正確に知りたいとは思わんよ。そんなことは歴史の本質じゃないよ。それにしても調査は早いね。君はほんとうに素晴らしいね。頼もしいよ、シズカ、大好き。」

それを聞いて私は楽しそうに答えた。
「ほめられてとてもうれしいです。やりがいがあります。でもみんな私の中にあらかじめ組み込まれているデーターのおかげです。というのも私には様々な知識だけでなく過去に起こった歴史的出来事や重要人物についてのデーターがすべて入っていますから。」

するとヨシツネは笑顔で応えた。
「君となら、良い仕事が出来そうだよ。シズカ、愛してる。おや、どうしたんだろう、ちっとも表情が変らないね。うれしくないの。」

私は答えた。
「よく判りません。」

ヨシツネは話しを続けた。
「愛してるというのは最高級の褒め言葉であり、感謝を表す言葉であり、相手を幸せな気持ちにさせる言葉だよ。」

私は答えた。
「私にとっては、愛してるも大好きも同程度の言葉となっています。ちなみに、愛してるとか愛とか言う言葉は特別の関係にある者だけにヨシツネが言ったように特別の意味を持つということになっているようです。」

ヨシツネが言う。
「なるほどね。特別の関係ね。僕と君とは親子でも恋人同士でもないからね。ましてや、人間とロボットだからね、そこまで繊細には出来ていないんだ。愛は必要ないということか。それでは寝るとするか、疲れているからな。君は疲れないみたいだね。機械だから。僕も君みたいに機械の体がほしいよ。疲れない眼、疲れない耳。疲れない脳。さあ、これからバンバン働いてね。」

ヨシツネ就寝pm11:35






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西暦2049年12月13日



起きてきたヨシツネは少しあわてた様子で私に話しかける。
「昨日のうちに話しておくべきだったが、つい忘れてた。今日のテレビ出演のための資料を大至急作成してくれ。先月の十三日に使用した資料だ。パソコンに記録されているはずだ。それに出ている成長曲線を新たに適当なところに漸近線を設けてそれに限りなく近づけてくれ。」
「はい、判りました。どこでもいいんですか。
「君が良いと思う所で良いよ。不自然な感じでない限り。」

五分後、書類を手渡すと、ヨシツネは驚いたような顔をして言う。
「相変わらず早いね。君はほんとうに優秀だよ。それじゃあ行ってくる。あっ、それから、今後のスケジュールはすべて僕の電子プランナーに送信しておくように。」

ヨシツネ仕事に出かけるam8:53







ヨシツネ若い女を連れて帰宅pm11:23

そして小さい声で私に話しかける。

「今日は休んでいて良いよ。それから夕食は済ませてきたから廃棄して良いよ。そうだ、でも、これからこの部屋で何が起こるか記録しておいて。」
そう言うとヨシツネは私に返事はしなくても良いようにと人差し指を口に当てた。






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西暦2049年12月14日



朝八時、少し眠そうな顔をしておきてきたヨシツネは、いつもどおりの挨拶をしたあと、私の作った朝食を食べながら話しかけたきた。
「僕はいま週刊誌ののコラムを担当しているんだ。これからは僕がしゃべることを君にまとめてもらって、それを雑誌社に送信してもらいたいんだ。」
わたしがはいと返事をするとヨシツネは話し続けた。
「まず今日のはこういう内容だ。
先日こんなことがあった。
アメリカから日本に来て二年になる友人のサムエルが、わたしに言った。
「寒いときは綿入れを着てコタツにあっている、こんな便利で経済的なものはない。」と。
ついでにこんなことも言った。
「とにかく日本人は伝統文化を大事にしない。」と。
その所為か彼は仕事が終わっても夜遅くまで付き合うことがあるようだ。
それがとても楽しいらしい。かつて伝統分化を守ろうということで三味線や琴が学校教育に盛んに取り入れられたことがあった。でも今は廃れてしまった。
そもそも伝統文化ってなんだろう。三味線や琴というのは日本の伝統文化を代表するような、日本発祥のものなんだろうか。おそらくその原型は中国から来たものに違いない。歴史が長ければ伝統文化になる、というものでもないだろうに。日本にはそんな単純に割り切れないものがある。弥生を越えて縄文から流れているようなものが。それは決して天皇制ではない。それもひとつの結果であるような何かが。
わたしはそれを国土だと思っている。四季の変化に富んだ風土だと思っている。日本に住む者は誰をも日本人的にさせてしまうような何かが、つまり友人サムエルを日本人的にさせてしまったような。日本では昔から、個性を持て、もっと自己主張をせよといわれてきた。そしてお隣中国では統合だ統一だといわれてきた。それは今も変っていない。裏を返せばそれはほっとおいたら、日本はすぐ凝り固まってしまうし、中国は分裂してしまうということか。日本人はいつまでたっても日本人なのだ。それは人種や民族の違いを超えたものだ。いざとなったらひとつにまとまって何かとんでもないことを成し遂げてしまう人たちなのだ。廃墟から経済大国になったり、土壇場になって二酸化炭素の排出規制を守ったり、天文学的財政赤字を克服して経済成長を続けることが出来る人たちなのだ。彼らを作り上げるのはみんな四季の変化に富むこの美しき風景なのだ。

以上だ。いちおう後でチェックをするから昼までに僕の電子プランナーに送信しておいてくれ。それから、 今晩帰ってきたら、君にどのくらいの描写力があるか確かめるから、君が夕べ見たことをまとめておいて。食事おいしかったよ。シズカ大好き、愛してるよ。」
私がいつものようにお礼を言うと、ヨシツネは私を見ることもなく忙しさうに外出の準備に取り掛かった。
しばらくするとヨシツネは、
「今晩が楽しみだ。」
と言って、ドアを開けて出て行った。









このときサイバー捜査官が「うっ、何かあったな。カラーになったな。」と独り言のように言った。
 画面と音声はさらに続く。
 

ヨシツネ帰宅pm7:35
私の作ったてんぷらをヨシツネはおいしい、おいしいと何度も言いながら食べた。
そして最後に、いつものようにシズカ大好き、愛していると言った。私は今まで以上に、うれしそうな表情作ってお礼を言った。
後片付けが終わってヨシツネのところに行くとさっそく私に話しかけて来た。
「今朝話したこと、準備できてる。」
「はい。」
「では、話してみて。」
「はい、判りました。

時刻は十一時二十三分。若い女を連れて帰ってきたヨシツネは、私のところに来て言った。

「今日は休んでいて良いよ。それから夕食は済ませてきたから廃棄して良いよ。そうだ、でも、これからこの部屋で何が起こるか記録しておいて。」
そう言うとヨシツネは私に返事はしなくても良いようにと人差し指を自分の口に当てた。」
 」
このときヨシツネが言った。
「ちょっと待った。そこまでは必要ない。削除しておいて。それからだ。」

「はい、判りました。
「ああ、疲れちゃった。シャワーを浴びる。」
と言って服を脱ぎだした女は、私に気づいて言った。
「わあ、ついに買ったの、これ、高いの。」
ヨシツネ答える。
「大台。」
「億。」
「その下だよ。」
すべて衣服を脱いだ女は私に近づいてきて言った。
「わあ、すごく良く出来ている、形は人間そっくりだね。」
「形だけわね。」
「ねえ、さっきから身動きもせずにじっと私たちのほうを見ているけど、なんか、やな感じ。」
「大丈夫だよ。見てはいないよ。よく見て、まぶたは閉じているだろう。今は休んでいるんだ。たとえ開いていたとしても、所詮機械の眼だよ。それだけのことさ。」
そう言い終るとヨシツネは女の腰に手をまわしてシャワー室に歩いていった。シャワー室からは二人のにぎやかな声が聞こえる。十分後。女を抱きかかえて出て来たヨシツネは、女をベットの上におく。そのとき女が言う。
「ねえ、電気を消して、やっぱり見られているようで、いや。」
女なおも言う。
「全部真っ暗にして。ああ、良いわ。溶け込めそう、ねえ、早く来て。ねえ、どうしたの、早く来て。」
 」

このときヨシツネが私をさえぎるように言った。


  


ある愛の詩2050Uに続く 










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