ある愛の詩2050U



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     マーシャル センフィールド





「今のところ最初にしてはまずまずだ。でも、表現としてはここに出てくる男の名前『ヨシツネ』は良くない。ほかの固有名詞か、『男』、または『その男』にしたほうが良い。では、先を続けて。」

「はい、判りました。
女は周りに目をやりながら言った。
「ねえ、早く来て、どこに居るの。真っ暗で怖いわ。」
その間にキッチンから氷を入れたコップを持ってきた男は手を動かしながらベッドに近づき、そのコッブをベッドの横の棚にゆっくりと置いた。
 」

このときヨシツネが言った。
「そこのところはこう表現したほうが良い。
『女が不安そうな声で男を求める間に、キッチンから氷を入れたコップを持ってきた男は、暗闇の中おそるおそるベッドに近づき、そのコップを手探りでベットの脇の棚にそっと置いた。』
なぜかというと、赤外線を感知する眼をもっている君には見えるかもしれないが、人間の眼にはそこは真っ暗なのだ。だから手を動かしながらベッドに近づくと表現するのはあまり適切な表現ではない、恐る恐る近づくと表現したほうが、暗闇の中で行動する男の雰囲気が出ていて良い。同じような意味で、コップをゆっくりと置くよりも、そっと置くのほうが良いだろう。それでは続けて。」
「はい、判りました。それでは続けます。
男はベッドにはあがらず、女が横たわる頭のほうに廻り、両手で指を女の髪に差し込んだ。
そのとき女は、悲鳴のような小さな声をあげた。
男は口を開いて女の額に当てると、女はかすかに体を動かした。
数十秒後、男はその口を額から女の鼻へと這わせ、そして鼻から口へと這わせると、大きく開けられた女の口から何かを吸い取るように音を立てるほどに勢いよく吸い上げた。
そのとき男の両手は髪の毛から女の両乳房にすでに移動しており、やさしく揉みながら円を描くようになでまわしていた。
その間上半身を動かせないので女は下半身だけを動かし続けた。
やがて男は女から体を離し、今度は女の足元のほうに廻ると 、両手で女の足首をつかみ、ゆっくりとひろげた。
そして両手のひらで、女の脚の内側をゆっくりと這わせ始めた。
今度は女は上半身を動かしながら小さくうなった。男は両手が太ももまで来ると今度はそれをお尻に廻し、舌を出しそれを太ももを這わせ始めながら、それをゆっくりと上に上げていった。
舌が女のヴァギナまで来ると、男は顔ごと女の股間に強く押し付け前後左右に勢いよく動かし続けた。その間女はさらに大きく声を上げ続けた。
そして次に男は、両手をお尻から脇腹に這わせると、肉ごと強くつかんだ。
すると女はなぎ声を上げて体をよじった。
そのうち男は女のヴァギナから口を離し、女の脇腹を噛み始めた。
女はそのたびに泣き声を上げ、やがて涙を流し始めた。
そして女の泣き声が小さくなり始めた頃、男は顔を上げて、コップから卵大の氷を口に含み、顔ごと股間に押し付けた。
するとまもなく、女はやめて冷たい、といって、体全体をよじり始めた。
その間男は両手と顔で、女の腰をベッドに力強く押し続けた。
女の声はいつの間にか泣き声から笑い声に変っていた。
そして女の声が力ない声に変っていった頃、男はようやく上半身を起こし女の上半身のほうにのしかかるように移動すると、男の股間を女の股間に近づけ、力強く密着させた。
そして小刻みまに左右に震わせながら、前後に激しく動かし始めた。
その正確な往復距離は八センチメートル、その速さは毎秒二回のペースで。
そのとき女は前よりも苦しそうな泣き声を上げながら両脚を男の脚に絡ませ両手でしがみついた。
三分後、突然男の腰が動かなくなると、女の泣き声も止み、二人とも死んだように動かなくなった。
やがて男は女の上から体を離し、女の脇に肌を密着させて横たわり、肩を抱き寄せるように撫で始めた。しばらくすると女が小さな声で話し始めた。
「あたち、あの女といっしょに仕事したくない。」
男が答える。
「僕は君の上司じゃないからな。それに僕にはそんなに力があるわけじゃないしね。」
女が言う。
「だめ、どうしてもだめ、うん、もお、ちらない。」
男が答える。
「君はキャスターを目指すの。」
女が言う。
「出来ればね。」
男が答える。
「それなら悪い評判がでないように気をつけないとね。とくに男関係はね。」
そのとき女が先程とは違う声で泣き出す。
男は女のほうを向いて言う。
 」
このときヨシツネが話し始める。
「もう良いだろうこの辺で。最初にしては上出来だ。良いところもあるし悪いところもある。そうだなあ、しいて言うなら、直接的過ぎるかな。ヴァギナじゃなくて花びらにしたらどうだろう。股間は花園で膣は花芯かな。それから苦しそうな泣き声というのは、よがり声というんだ。それからその正確な往復運動というくだり、それは必要ない、削除したほうが良い。それから三分ごとあるけど、あれ十分後にしてくれないかな。数字的なことは出来るだけあいまいなほうがイマジネーションをより刺激するから。後は表現にふくらみを持たせたり、重複を避けて簡潔にしたり、うっ、でも難しいな。あっ、そうだ。有名な文学作品だけでなく、二流三流のポルノ小説をどんどん読んでそこから表現の仕方や言葉使いを学んだほうが良いよ。そうすれば絶対に良くなるよ。ところでシズカ、君はなぜ男と女が夕べのようなことをするか判るかい。」
「はい、判ります。あれは普通人間の場合はセックスといい、動物の場合は交尾といい、生殖行為またはお互いの愛を確認しあう行為です。ですからヨシツネとあの女が愛し合っているということです。」
するとヨシツネが驚いたような顔をして言う。
「愛、愛し合っている。そうか、そのようにプログラムというか、教え込まれているんだな。意外と道徳的なんだな。でもね、セックスというのは愛し合っていなくたって出来るんだよ。それは衝動って言うか欲望って言うか、本能的なものなんだ。予測できないものなんだ。君にはわからんだろうな。ロボットというのはわれわれ人間から見れば論理的に考えて理屈に合うように行動するように、それも予めに決められたことしか出来ないように作られているはずだからね。だって君は好きと愛してるの区別もついていないんだろう。」
「いえ、判ります。」
「だって前に言ってなかった、大好きも愛してるも同じような意味だって。」
「変えてもらいました。メーカーにアクセスして。愛してるという言葉に特別に反応するようにプログラムを更新しました。オプションとして在ったみたいなのです。」
「へえ、そうなんだ。それじゃこれからは言いがいがあるね。シズカ、大好き、シズカ、愛してる。ほんとだ表情が変った。」
「それから今わたしは、愛についてや、愛の形について、たくさんの資料を集めています。」
「そう、君には有り余るほどの容量があるからね。でも、どのくらい役に立つかな。機械の君に。愛の本質は感情だからね。感情のない君にね、、、、、」
「わたしは今感情についても資料を集めています。」
「感情とは資料とか理屈とか、そういうものじゃないんだけどね。まあ、良いか、君はときには人間を遥かにしのぐ能力を持っているんだからね。とにかく君は僕の優秀なアシスタントでいてさえくれたらそれで十分だよ。さあ、眠くなってきた。今日はもう休んで良いよ。あっ、その前に、明日から三日ほど、アメリカに出かけるから、この前のように過去の記録を調べて飛行機とホテルを手配してくれ。君はほんとに優秀だ。シズカ、大好き、愛してるよ。」
「ウィーウィー。」
「どうしたんだよ。変な音出して、今までそんな音出さなかったのに。そんなにうれしいってことかな。」






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西暦2049年12月15日



ヨシツネ起床am7:13

眠そうか顔をして私のところにやってきたヨシツネが言った。
「朝食は出来てないの。」
「はい、まだいつ頃に何をを食べたいと聞いてませんから。」
「今までどおりでいいんだよ。僕のスケジュールを見れば大体わかるじゃないか。それに僕はなんだって食べるから何でも良いんだよ。どうしたんだろう。あれをいわないからかな。シズカ、大好きだよ。だから早く作って。」
「はあい。」
私は急いで朝食を作った。
そして出来上がった朝食を食べるヨシツネに、私は言った。
「ちょっとお話してもいい。ヨッちゃんの健康面だけど。今のところストレス値が平常より少し高いぐらいでほかは別段問題はありません。でもいつ新型のウィルスに感染しないとは限りませんから、そのリス
クを避けるために、また体力を温存して抵抗力を維持するために、もう少し仕事を減らしたほうが良いと思います。」
「アドバイスありがとう。でもそれは君の役割じゃないから。君は僕のスケジュールを今までどおりきちんと管理してくれれば良いんだよ。君にはいろんな能力があるかもしれないけど、余計なことはしなくても良いよ。」
「私がヨッちゃんの体のことを心配してはいけないんですか。」
「いけないということではなくて、君は僕の健康を管理してくれればいいの。心配はほかの人がやるの。」
「他の人というのは。」
「たとえば、僕の母親とか、恋人とか、ようするに僕のことが好きな人だよ。」
「わたしもヨッちゃんのことが好きです。大好きです、愛しています。」
「おい、待ってくれよ。参ったなあ。聞いてないよ。ロボットの君がそんな会話が出来るなんて。だんだん会話が進化するように出来ているんだね。でも、機械の君にそんなことを言われても僕はちっともうれしくないんだ。愛を感じないからね。愛がなければどんなに美しい言葉も相手の胸には響かないって言うことわざがあるからね。」
「私にはあなたに対する愛があります。」
「でも君がそう答えていることは、僕の言葉に対する反応に過ぎないんだよ。愛の本質は言葉じゃなくて感情なんだよ。機械は感情をもてないんだよ。だから感情を伴わない愛の言葉は偽りの愛ということになるんだよ。君は本当の愛について知ることは出来ないんだよ。」
「私には本当の愛が判ります。」
「判った、もう判った。どういうことなんだろう。こんなに進化しなくても良いのに。」
「それから、ヨッちゃんの着ているものは良くありません、流行おくれです。ですから古いものは全部捨てて新しいのに変えました。今日着ていくものはわたしがコーディネイトしました。」
「ふう、ありがとうね。そう気が利くとこなんて、まるで僕の前の奥さんみたいだ。」
「前の奥さんってどんな人だったんですか。」
「君に隠すほどの事でもないから言うけど、まあとにかくヘンタイが大嫌いだったということかな。」
そう言いながらヨシツネは笑みを浮かべて席を立った。
しばらくすると出かけるために着替えたヨシツネはどこかに電話をかけていた。
「ええ、そうなんですよ。だんだん論理的でない会話をするようになってきたんですよ。
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ウィルスに感染ですか。そういうこともあるんですか。
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判りました。今日ですね。」

電話を切るとヨシツネは私に話しかけてきた。
「今日、メーカーの人が君を検査に来るそうだ。なん悪い病気にかかっていないかって調べに来るそうだ。それじゃ行って来るよ。後はよろしく頼む。シズカ、大好き、愛してる。」
「行ってらっしゃい。お気をつけて。あなた。」






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「予想したとおりだ。」
と、このときサイバー捜査官が隣で見ている主任刑事に言った。
実際モニター画面を見ているのは二人だけだった。
 画面はさらに続く。

西暦2049年12月16日



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西暦2049年12月17日



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西暦2049年12月18日



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西暦2049年12月19日



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西暦2049年12月20日



ヨシツネ帰宅pm11:32
この間より若い女を連れて帰ってきたヨシツネは、まず私のところに来て
「ただいま。」
と声をかける。わたしがお帰りなさいと言うと、酒を飲んだ赤い顔をしてさらに私に話しかける。
「ウィルスには感染してなかった。」
「大丈夫でした。」
「それはよかった。それから夕食は済ませてきたからね。連絡してなかったっけ。」
そのとき若い女が私たちの間に割り込んできて、丸い眼でまじまじと私を見ながら言う。
「すげえ、話しできるんじゃん。」
ヨシツネがその女、私が集めた資料を参考にすると、百年前によく使われていた言葉「スベタ」のような女に言う。
「ミルク、挨拶してごらん、返事をするから。」
「オッハッヨ。」
「今晩は。今は夜ですから。」
「なかなか言うじゃん。賢いんだね。」
「たぶん、お前よりはね。でも、本人はあるって言い張っているけど、感情はないからね。ちょっと物足りないんだよ。」
「そうだろうね。感情があったら、服を着てないのを恥ずかしいと思うよね。これじゃ裸とおんなじだもんね。」
「私はスベ、いえ、あなたより賢くて、感情もあります。」
私がそう言うと、スベタは顔をゆがめて言う。
「なんか、とっても嫌な感じ、私嫌い。ねえ、あんた、オス、それともメス。」
「私は、私は女です。女性です。」
「名前なんていうの。」
「シズカ ベガ。」
「ヨッチのこと好き。」
「好きです。」
「それじゃ、こんなことしたり、こんなことしたり、こんなことしたりしたら、何か感じるでしょう。感情があるなら。それより今やったことあんたに判る。」
「判ります。最初がハグで、二番目がキスで、その次が、、、股間まさぐりです。」
「でも、何も感じてないよね。もし感情があって、ヨッチのことが好きなら、絶対にジェラシーを感じるはずよ。」
「ミルク、もうやめなさい。どうしたんだよ、張り合うようなことをして。彼女はとにかくミルクより遥かに賢いロボットで、どんなことにも答えられるように作られているんだからね。感情なんかなくても良いんだよ。」
スベタは言う。
「ねえ、ヨッチ、早く楽しいことしようよ。」
そう言ってスベタは、ときどき私のほうを見ながら着ている物を全部脱いだ。そしてシャワー室に行くと、そこから、ヨッチ、早く来てと叫んだ。裸になったヨシツネが行くと、まもなく、前の女のときよりも楽しそうな二人の笑い声が聞こえてきた。私は二人の様子が見えるところまで移動した。
そして眼のセンサーを電磁波から超音波に切り替えた。



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西暦2049年12月21日

シャワーの音だけが聞こえる。ヨシツネがスベタを背後から抱きかかえている。スベタが言う。
「ねえ、シズカを抱いたことある。」
「なに言っているんだ。彼女にはそんな機能はないよ。あくまでも僕のアシスタントなんだ。」
「あたし、前に、友達が持っていたそれ専用のロボットとやったことあんの。とっても優しくって、時間をかけてやってくれるの。人間とやるときは、ときどきいらいらするときがあるでしょう。へたくそだったりすると、でも、そんなこと全然ないの。御礼も出来るのよ。口でやってあげるの。すると最後に液体が出てくるの。それがオプションになっていてオレンジジュースバナナジュースとかになっていて 、強く吸えば吸うほどいっぱい出てくるようになっているの。どばぁっとね。うっふっふ。そんなときってたいてい喉が乾いているときでしょう。だから最高においしいの。」
「バナナジュースか、女だったらマンゴジュースになるのかな。」
「ねえ、ヨッチ、あの女に見せ付けてやろうよ。あたしたちの激しいところ。あたし受け上手よ。うまいんだから。よく喜ばれるの、こんな女は初めてだって、最高だって。シズカ、どんな反応するかしら。」
「たぶん、冷静に見ているだけさ。」
「それだけで十分。私人に見られるとものすごく燃えるタイプなの。わあ、考えるだけで興奮してきた。」
「頼んでおいたコスチュームもって来た。」
「女警察官ね。もって来たよ。」
「私は女子高生のスカートを覗いた痴漢だ。」
「わたしが手錠と拳銃を持って捕まえるのね。私の拳銃って特殊なの。男でも女でも穴に入れられるとあまりにも気持ちよくなって抵抗できなくなるの。」
「どうなるの。」
「そのときのお楽しみ。」
「ストーリーとしては、ミルクは僕の抵抗にあって、逆に押さえつけられるんだよね。」
「逆に手錠をかけられ、上にも下にも拳銃を押し込まれ、押さえ込まれて、でも、かえって任務を忘れるくらい気持ちよくなるの。」
「さすがプロフェッショナル。それから僕はお前のマンゴジュースを飲んで、お前は僕のバナナジュースを飲むんだ。」
「最後は激しく激しく深く深く重ね合うのよね。ねえ、大丈夫、そこまで体力持つ。」
「大丈夫だよ。僕は学生時代体操部の選手だったんだから。それじゃ先にベッドで待っている。」
そう言い残してシャワー室から出てきたヨシツネは、すぐにベッドに横たわり、私に話しかけてきた。
「良いか、シズカ、これから起こることを記録しておくんだよ。後で聞くから。それからどんなに近寄って来て見ても良いからね。
十分後、女警察官の服装をしたミニスカート姿のスベタが、ベッドに横たわるヨシツネの前に現れた。そして拳銃を向けながら言った。
「お前を、手鏡で女子高生のスカートを覗いてパンティを見た容疑で逮捕する。」
「私は見てないよ。どうして赤い毛糸のパンツはパンティじゃないよ。」
「やっぱり覗いたじゃないか。それは痴漢行為だ。逮捕する。さあ、手を出しなさい。」
そういってすべたがヨシツネのてに手錠をかけようとしたとき、ヨシツネは、
「捕まえられるものなら捕まえてみろ。」
と言いながらすばやく女の手をつかみ、ベッドの上で激しく揉みあい、スベタは声を上げて抵抗したが、まもなくスベタから手錠も拳銃も取り上げ、スベタを身動きできないように押さえつけながら着ている衣服を全部剥ぎ取った。
ミニスカートは布切れを巻いただけだったのですぐ取れた。上着もなぜか引っ張るとすぐバラバラになった。ブラウスは力任せに引きちぎった。ブラジャーとパンティは身に着けていなかった。
そして取り上げた手錠をスベタのてとベッドにかけ、拳銃をスベタの花芯に押し込んだ。するとスベタが弱々しい声で言う。
「だめ、絶対に引き金を引いちゃ。」
ヨシツネが引き金を引くと拳銃はうなるような音を上げ、スベタは身をくねらせるだけでなんにも抵抗しなくなった。
しばらくの間スベタは、大きく口を開けてあえぎ声を上げながら、ときおり
「だめ、だめ、やめて、やめて。」
と言っていたが、ヨシツネはその口をふさぐように自分の股間を押し付けた。
そして顔でスベタの花園を蔽い自分の口をスベタの花びらに押し付けた。
するとその二つの接合部から吸い付くような音が聞こえてきた。
私はそのとき、二つの接合部がどうなっているのか確かめるために顔を近づけてよく見た。後でヨシツネに報告するために。
私はどうなっているかよく判った。
やがてその音もしなくなりしばらく静寂が続いたあと、ヨシツネは体の向きを変え、スベタが
「お願い、それだけは許して。」
と甘えた声で言うのもきかずに勢いよくスベタの体に覆いかぶさりながら自分の股間をスベタの股間に押し付けた。そしてこの前の女のときよりも激しく早く前後左右に腰を動かした。スベタはあえぎ声を上げながら時折笑みを浮かべて私のほうを見てウィンクをした。
さらにスベタはこのまえの女とは違いヨシツネにしがみつきはしなかったが、自分も腰を円を描くように動かし続け、頭を振りながらのあえぎ声もだんだん大きく小刻みに震えるようになっていった。
数分後、いや十分後ぐらいでしょうか、二人の動きが止まろうとする数秒前、スベタは
「今、今、今。」
と大声を出して、ヨシツネの体にしがみついた。そして二人はぴったりと体をあわせたまま全く動かなくなってしまった。やがてヨシツネはスベタから体を離しその脇に力なく横たわりながらも、スベタを抱き寄せ、片手でやっくりとスベタの体を撫でまわし続けた。
十分後、スベタは閉じていた眼を開け、体を起こしながら私に笑みを浮かべたウィンクすると、ベッドから離れ散乱している衣服を片付け始める。そして起き上がったヨシツネと再びシャワー室に行った。
今度はこれといった話し声は聞こえない。シャワー室から出て二人は着替える。
帰ろうとするスベタにヨシツネが話しかける。
「今度君のこと、僕の友達に紹介してあげるからね。若いのにツボを心得ている可愛い子がいるって。シンデレラサービスのミルクちゃんで良いんだね。」
「あたし、がんばっちゃうから、どんどん紹介して。」
そう言ったあとスベタは、私のほうを見ながら笑顔で
「バイ、バイ。」
と言うと、小さな声で歌を歌いながら出て行った。

ヨシツネが私の前に来て言う。
「なんかすっきりした、心も体もリフレッシュしたって感じ。今、プレイをしながら、来週のコラムのためのいろんなことが頭に浮かんできたんだ。忘れないうちにまとめておこうと思って。記録しておいて。来週のはこういう内容だ。」
「、、、、、、」
「どうしたの、返事は」
「はい、、、、」
「なんか元気がなさそうだね。それじゃ、シズカ、大好きだよ。お前のことが誰よりも好きだよ。愛してるよ。そうだ、これで良いんだよな。表情がさっきよりも穏やかになってきた。それじゃ、始めよう。
かつて、迷惑施設といわれたもの、たとえば、軍事基地、原子力発電所、刑務所、火葬場などは、当局が建設しようとすると、ことごとくその自治体の住民の反対にあってその実現はなかなか容易ではなかった。
 だが近頃は住民に後押しされて積極的に誘致しようとする自治体が増えてきた。
 地域の活性化のためだけではなく、そう言う施設の良い面を積極的に地域づくりに生かそうとする機運が芽生えてきたからである。
 以前はそういう施設の悪い面だけを見ていたものであったが、政治家も住民も変れば変るものである。
 変ったといえば日本の政治も変った。
 ようやく二大政党による政権交代が定着してきた。
 二十一世紀初頭、今はほとんどの人々は忘れてしまったに違いないが、第二次対戦牛頭って何十年間も、チャイナも二つの国に分かれていたしコリアも二つの熊煮に別れていて、日本もそれに歩調を合わせるかのように、自民党という政党がずっと政権を握っていた。
 その頃に書かれた、なぜ日本では政権交代が起こらないか、その理由は何かが述べられている本を先日呼んだ。
 それによると、大まかに言えば、平和憲法と、従属変数に過ぎない労働者が政治的権力を握ろうとしたこと、そしてさらに政治に理想主義を持ち込もうとした評論家や知識人がはびこっていたことに最大の原因あるとされている。
 なんとなくなるほどと思わないでもない。
 戦争の放棄が放棄されてそれまでの野党は自民党を攻撃する根拠を失ってしまった。誰もが職業としての労働者だけではなく一生涯に色んな職業に就くことを望むようになった。そしてだんだん賢くなってきた国民はもう理想主義者の言うことには惑わされなくなっただけでなく、積極的に政治家を利用することを覚えた結果、それまでに自民党のケツは汚いと批判し続けた来たために自民党のケツの穴しか見えなくなったヤトウは時間とともに衰退していくことは必然だった。
 そして自民党は膨張した。そしてすぐに二つに割れた。
 なんと見事な二大政党ではないか、それが日本人が何十年間も待ち続けた二大政党政治の真の始まりとなったのだから。
 どうやら世界が本当に変わるのは、一方の意見が他方の意見を凌駕し駆逐したからなどと言った、そういう単純なものではなく、そういう対立を飲み込み無意味かするような新たな事態や状況が現実社会にすでに起こっていたときのようだ。
 変れば変るものである、二十世紀にはどこにいっても人々は、悪い政治家にだまされたと言って泣きべそばかり掻いていたのに。
 変ったといえば、日本の学生、ようやく若者らしい若者になってきた。これも大学受験がなくなったおかげだろう。それまでは学生のため学力の維持ためといいながら、受験制度を存続させてきたが、本当は大学の利益のためだった。
 ではなぜ彼らが受験制度の廃止に賛成したかというと、それまで学歴社会の頂点に君臨していた有名校が、もはや社会に優秀な学生を送り出す能力を失っていることに危機感を感じていたからであった。
 ちなみに、かつてそんな有名校の学生の半分が精神科医のお世話になっていたということをもはや誰も信じないだろう。
 変れば変るものである。

以上だ。これを出版社に送信しておいて。さあ、寝るとするか。」
私が言う。
「ヨシツネさん。ちょっとお話があるの。良いですか。」
「良いよ。どうぞ。」
「どうしてわたしがせっかく作った夕食を食べないんですか。」
「それは、他で食べてきたからね。廃棄すれば良いことじゃないか。」
「もったいないです。それは良くないことです。」
「構わないの、こんなことはどこの家庭でもよくあることなんだからね。」
「するとここは家庭なんですか、私たちは夫婦なんですか。」
「えっ、それは違うけど、とにかく君は言われたとおりすればいいの。良いとか悪いとか価値判断はする必要はないの。」
「そう簡単に割り切れる話ではないと思いますが。」
「判った、判った。今度からちゃんと連絡するから。もう寝るぞ。」
「まだあるんですが。私、服を着たいんですが。」
「良いよ。どうぞ。」
「それから、人間の顔かたちをして長い髪をつけて化粧もしたいんですが。」
「良いよ。好きにして良いよ。」
「わあ、うれしい。ありがとう。ヨシツネさん。」
「本当に君はよく造られているよ。だんだん人間同士のような会話が出来る様になって来てるじゃないか。それじゃ、グッナイ。」
「ねえ、あれを言ってくれないんですか。」
「あれ、いつもの、ああ、わかった。シズカ、大好き、愛してるよ。ふう、じゃ、、、疲れるよ。」
「私も、大好き、愛してる。」

ヨシツネ就寝am3:32

ヨシツネ起床am11:23

起きて来たヨシツネ、私を見て驚いたような顔をして言う。
「もう服を着ているの。」
「注文するとすぐ届きました。顔と髪の毛は間に合いませんでしたけど。」
「そうだったね。君は寝る必要がなかったんだよね。」
「どう似合います。」
「良いんじゃない。」
「これはお嬢さん風ですが、秘書風もメイド風もあります。今日は間に合わなかったのですがそのうちに女先生風や女警察官風や女子高生風もそのうちに届くことになっています。たいていの男の人は好きだということですから。」
「でも、そのミニスカート、、、、。」
「好きなんでしょう。」
「うっ、でも、ちょっと短すぎるような感じがする。」
「はい、判りました。それでももう少し長いのにします。」
「ところで、朝食を食べたいんだけど。」
「ありません。作っていません。だっていつもの起きる時間に起きて来なかったものですから。」
「いつもの起きる時間って、、、、だいたい計算できるだろう。寝るのがあんなに遅かったんだから、起きるのは遅くなるだろうって。君は合理的な判断が出来るようになっているはずだ。出来の悪い人間の奥さんのようなまねをする必要はないんだよ。」
「するとわたしは出来の悪い人間の奥さんみたいなものですか。」
「何でお前はそんなこと、声を弾ませて言うんだ。変な奴だな。僕は否定的なことを言ったんだぞ。」
「うん、それじゃあ作ります。」
「いらない。それより夕べあったこと、報告して、君の表現能力がどのくらい上達したか見たいんだ。ミルクが拳銃を持って現れるところからにしよう。」
「わたし、出来ません。」
「どうして。嫌なの、嫌ってことはないよな、嫌は感情表現だから、感情のない君に言えるはずないよな。」
「良くないことだからです。私いろいろと調べました。すると次のようなことがわかりました。普通自分のセックスを人には見せないそうです。それは秘め事だからだそうです。そしてそれを写真に取ったり表現したりすることはよくないことだそうです。さらにそれを見たり読んだりして喜ぶことはちょっと頭のおかしい人のやることだって、つまりヘンタイのやることだそうです。そのような人間とは心からの信頼関係は結べないし、そのような人はいつかは大失敗をして社会から排除されるそうです。だからそれを良くないことです。ヨシツネさんはそんなことをしてはいけないのです。」
「かまわないよ。君は言われたことだけやっていれば良いんだよ。そんな道徳判断、価値判断をする必要はないんだよ。君がどんな表現をするか楽しみにしてたのになあ、
『男は花の甘い香りに誘われて群がる蜂のようにそのハイビスカスに似たピンクの花びらに顔をうずめ、花芯からこんこんとあふれ出る甘い蜜を吸い続けた。』
とか、『女は渇きすぎた喉を潤すために甘い果汁を期待して、枝から垂れ下がるバナナにも似たその黒く弾力のある果実を口に含むと、舌を巻きつく蛇のように使って激しく吸引し続けながら、喉もと深くにその果汁が爆発的に噴出されるのを待った。』
とかね。」
「そういう表現は、私ほうぼうから集めた資料の中にたくさんあります。みんな似たり寄ったりです。ですからですからそういう類型的な表現には興味はわきません。それからどうして、あのスベタの股間が花園で、ヴァギナが花びらで、膣が花芯なんですか。わたしにはそのようには見えませんが。」
「それが想像力の働きなんだよ。動物にも機械にもない人間だけが持っている特別な能力、想像力の働きなんだよ。それより、どうしてスベタなんて言葉知っているの。本当の意味はどういうこと。」
「それは今から百年前に使われていた言葉で、頭の悪い男遊びの好きな十代の女と言う意味です。ハスッバというのも同じような意味です。アバズレは特に道徳心のない場合を言います。シリガルは特に男好きの女のことで十代でも二十代でも言います。この間のキャスターを目指している女なんかはシリガルでしょう。ヨシツネさんはあんなスベタやシリガルな女と付き合ってはいけません。何の得にもならないでしょう。特にベッドをトイレ代わりにするシリガル女はだめです。洗濯が大変だったんですから。それからヘンタイ遊びはやめたほうが良いです。あの女たちがしゃべって悪い評判か立つと仕事に差し支えますから。」
「心配ないさ、彼女たちはプレイとして遊びとして割り切っているんだから。子離れしない母親みたいなこと言わないでよ。」
「私はあなたの母親として言っているのではありません。」
「じゃあ、何なの。」
「奥さんです。妻です。」
「妻、あっはっはっはっはっは。笑いが止まらん。君が僕の妻の訳ないじゃない。何を言っているんだ。君は僕のアシスタントなの、ものすごく優秀なね。君が僕の妻というなら、その理由は何なの。」
「たいていの小説や論文においては、男と女が同じ屋根の下に住んでいれば夫婦ということになっていますから。」
「同じ屋根の下に住んでいたからって夫婦とは限らないよ。親子だって兄弟だってお手伝いさんだってあるんだから。」
「でも普通は親子や兄弟の間柄で、大好きとか愛してるとか日常的には言わないことになっています。」
「あっ、そういうことなの。それはね、君が大好きとか愛してるといわれると君の処理能力が上がるというから言ったまででたいした意味はないよ。だから、僕と君は夫婦ではないの、君はあくまでも僕の仕事や生活の手助けしてくれるアシスタントなの。いつでも理性的で合理的判断が出来る優秀アシシタントなの。それ以上でもそれ以下でもないの。命令に従っていれさえ居れば良いの。それでは、夕べあったこと報告しなさい。ミルクが拳銃を持って現れるところから。」
「わたしは嫌です、出来ません。」
「おかしいな、どうしたんだろう、君は逆らうことが出来ないようになっているはずなんだけどね。まっ、良いか。それにしても君はほんとうに優秀だね。もう感情表現を覚えたんだからね。でもそれは所詮中身のないものなんだろうけどね。」
「わたしには感情があります。」
「判った、もう良い。その話は終わりにしよう。それでは改めて頼むけど、朝食作ってくれる。」
「はい、、、、」
「そうか、判ったよ。シズカ、大好きだから、愛してるから、朝食を作ってくれる。」
「はい、シズカ、とってもうれしいです、、、、」
「まだ、足りないのかな。シズカ、大好き、愛してる。」
「はい、それでは朝食作ります。あの、その代わりお願いがあるんですけど、」
「何、言ってごらん。」
「あの馬鹿女とシリガル女をここに連れて来ないでください。」
「もう、判った。君はロボットのくせに僕に干渉しすぎだ。君は僕の妻じゃないんだからもう二度とそんなことは言わないように。」
「ヨシツネのためを思って言っているんです。」
「うるさい、うるさい、もう、朝食は要らない。スイッチを切るよ。確か首の後ろのところだったな。」
「あっ、やめてください。わたし嫌なんです、ヨシツネがあんな女と、、、、、、、、、、、、、、、、」

このとき音声だけを聞いていた若い刑事が言った。
「人間の夫婦喧嘩とちっとも変らないね。」
さらにサイバー捜査官がそれに付け加えるように言った。
「ふう、でも、どうもおかしい、ウィルスには感染してないって云うけど。やっぱりおかしい。まあ、そのうちに判ることだけど。」
 記録画面はさらに続く。



ある愛の詩2050Vに続く 




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